カスティールは古い名前だ。オリーブオイルと苛性ソーダと水だけでつくる石けん。ほかのオイルは入らない。本稿では、Lê Mai が今も守るクラシックなカスティールの処方を記録する。
カスティール · 500年を超える名前
名前は12世紀スペインのカスティーリャ地方に由来する。この石けんは王宮のために、土地のオリーブオイルでつくられた。16世紀には処方がヨーロッパ中に広まり、上質な石けんの標準となった。
その後の5世紀のあいだに、何百もの石けん処方が生まれた。泡立ちのためにココナッツを、コンディショニングのためにバターを、香りのためにフレグランスを加えた。カスティールは、ひとつのオイルを守り続けた。
今もカスティールは、敏感肌向け石けんの基準である。もっとも簡素で、もっとも長く残る。
なぜオリーブ100%なのか
オリーブオイルの70〜75%はオレイン酸である。一価不飽和脂肪酸だ。オレイン酸の分子は長く、鹸化した石けんに硬さを与え、水のなかできめ細かな泡を生む。
ココナッツと比べて、カスティールは肌を乾かさない。スイートアーモンドと比べて、べたつかない。パームと比べて、固まるのが早すぎない。ひとつのオイルが、硬さとコンディショニングとやさしさの均衡を保つ。
乳児の肌、敏感肌、反応しやすい肌は、多種のオイルを使う処方よりカスティールを受け入れやすい。理由は変数が少ないことだ。処方に含まれる脂肪酸の種類が少ないほど、感作のリスクは低くなる。
苛性ソーダの比率と鹸化
エクストラバージンオリーブオイル1000グラムに対し、NaOHは127〜130グラム必要だ。オリーブオイルの鹸化価は0.134。つまりオリーブ1グラムを完全に鹸化するには、NaOHが0.134グラム要る。
苛性ソーダ溶液に使う精製水は280〜300グラム。水とアルカリの比はおよそ2.3対1。苛性ソーダが完全に溶けるには十分で、反応が遅くなるほど薄くはない。
スーパーファットは5〜8%に設定する。つまり、あえてオイルを多めにして完全には鹸化させず、遊離オレイン酸を石けんに残す。この遊離オレイン酸が、石けんを洗い流したあとに残るコンディショニングの部分になる。
32〜35°Cで冷たく混ぜる
オリーブは室温ですでに液体なので、溶かす必要はない。加熱して溶かさなければならないココナッツやパームを含む処方とは違う。
苛性ソーダは水と混ぜると最高80°Cまで発熱する。自然に32〜35°Cまで冷ましてからオイルに加える。オリーブも同じ温度にしておく。苛性ソーダ溶液をゆっくりオイルに注ぎ、スティックブレンダーで均一に混ぜる。
カスティールはほかの処方よりトレースに達するのが遅い。ライトトレースまで5〜8分混ぜる。さらに数分待ってミディアムトレースにする。それ以上濃くする必要はない。
48時間後にカット
クッキングシートを敷いた木の型に流し込む。軽く包んで保温するが、温めすぎない。カスティールは多種オイルの処方よりゆっくり鹸化し、ジェル化はおだやかに長く続く。
標準的なレシピの24時間ではなく、48時間型に置く。48時間後、型から出してワイヤーカッターで切れる硬さになる。まだしっとりしているが、形は保つ。
石けん一つの厚さは2.5〜3センチ、重さは110〜130グラム。表面は淡い黄色で、ココナッツの多い石けんのような白墨色ではない。
4〜6か月の熟成
カスティールはコールドプロセスの処方のなかでもっとも熟成が長い。最初の1週間、pHは10〜10.5前後。アルカリが強すぎて使えない。
2か月目にはpHが9まで下がる。硬さが増す。オリーブのもとの香りはやわらぎ、かすかなベースになる。
3〜4か月目にはpHが8.5〜9で安定する。十分に硬いが、まだ最良ではない。使えはするが、本来の質には届かない。
5〜6か月目にはpHが8〜8.5を示す。硬さは最大になる。泡はもっともきめ細かい。敏感肌にも乳児にも使える状態になる。
カスティールは忍耐の練習である。ひとつのオイル。ひとつの石けん。4〜6か月。
近道はない。月を重ねるごとに、オレイン酸の分子は少しずつ密に、少しずつやさしく落ち着いていく。