精油が七つ、50 mlのバッチ、はかり、そして表計算。ブレンド講座の最終レッスンは、処方を滴からグラムとパーセントに書き換え、各素材を IFRA と皮膚への上限に照らし、レッスン7でつくったまさにその瓶の原価を計算する。
滴は不揃いな単位
これまでの七つのレッスンは滴で数えてきた。ムエットで作業するとき、滴が最も手軽な単位だからだ。ライブラリは1滴を約0.05 ml、つまり1 mlあたり20滴として扱う。同じ慣習には誤差の幅もついてくる。粘度、温度、スポイトの種類によって、約20%。
20%の幅は、二枚のムエットを比べるのが目的なら、ほとんど問題にならない。だが処方を正確に繰り返さなければならないとき、あるいは素材が安全上の上限に近いとき、それは大きな問題になる。ベチバーのような濃い精油は大きな滴になり、さらりとした柑橘の精油は小さな滴になる。どちらも10滴と書かれた二つの処方が、違う量を含むことがある。
ライブラリの処方計算機ははっきり書いている。少量なら、滴を数えるよりグラムで量るほうが正確だ、と。プロの処方はたいていグラムで量り、ジュ(香料原液)に対する千分率かパーセントで書く。滴は手早い試験には役立つが、処方を保管する単位にすべきではない。
だからレッスン8では新しい精油を加えない。レッスン1の10本の瓶からレッスン7で寝かせた瓶まで、七つのレッスンを旅してきた処方を取り上げ、瓶ごとに変わらない単位で書き直す。
グラムとパーセントに換算する
第一歩は、ジュを合計100のパーセントで書くことだ。このレッスンの例の処方。スイートオレンジ30、コリアンダーシード5、クラリーセージ10、ダマスクローズ3、ゼラニウム17、パチョリ30、ベチバー5。スイートオレンジはトップ、ローズとゼラニウムはハート、パチョリとベチバーはベースにある。コリアンダーシードとクラリーセージは、レッスン5で試した二つのモディファイアーである。
ここではゼラニウムがフローラルの層の大半を担う。ライブラリの代替チャートは、ゼラニウムがシトロネロールやゲラニオールなど多くの分子をローズと共有し、ローズを減らさなければならないときにフローラルの層を支えるためによく使われると記している。ローズがなぜ3%まで下がっているのかは、上限の確認で明らかになる。
第二歩は、バッチと濃度を決めることだ。15%で50 mlのバッチなら、ジュは7.5 ml、アルコールは42.5 ml。ジュの各行に7.5 mlを掛けると、その体積が出る。スイートオレンジ2.25 ml、ローズ0.225 ml、という具合に。
第三歩は、密度を通して体積をグラムに換算する。処方計算機の初期値は0.9 g/mlで、精油の密度はふつう0.85から1.05のあいだにあると記している。この初期値なら、ローズ0.225 mlは約0.2グラム。ロットごとの実際の密度がわかっていれば、行ごとに入力するべきだ。シナモン、クローブ、ベンゾインのように、水より重い素材もある。
素材ごとに上限と照らし合わせる
処方をパーセントで書いてしまえば、上限の確認は掛け算にすぎない。ジュのなかの割合に濃度を掛けると、完成品のなかの割合になる。ジュの3%のローズは、15%なら製品の0.45%。ジュの17%のゼラニウムは2.55%。ジュの30%のパチョリは4.5%。
それぞれの数値を、その精油のページの上限と比べる。ダマスクローズの皮膚への最大使用濃度は0.6%で、0.45はその下にある。ゼラニウムは17.5%で、2.55ははるかに下。パチョリには独自の IFRA 濃度上限がない。処方計算機はこの段階を行わない。上限を調べる場所は、安全性のページと各精油のページである。
二つ目の確認は分子まで降りる。いくつかの精油が同じ化合物を含むからだ。ゲラニオールの IFRA 上限は、洗い流さない製品で5.3%。この処方では、ゲラニオールはゼラニウムから最大30.3%、ローズから最大25.7%、さらにコリアンダーシードとクラリーセージから少量来る。最大値を足し合わせても、完成品のゲラニオールは1%未満にとどまる。
本当に制約となる化合物は、メチルオイゲノールである。ダマスクローズはメチルオイゲノールを最大3.3%含み、フレグランス製品での IFRA 上限は完成品の0.02%。ローズ0.45%なら、メチルオイゲノールは約0.015%になる。ローズがジュの3%で止まるのはそのためだ。同じジュをボディローションに入れるなら、メチルオイゲノールの上限は0.0004%となり、ローズはほとんど処方から出ていかなければならない。IFRA についての記事が、上限が製品カテゴリーによって変わる理由を説明している。
原価——最も高い素材が決める
処方計算機には原価の列がある。各行は素材10 mlの価格をとり、行の原価はml数を10で割って価格を掛けたものになる。通貨は入力したものがそのまま使われる。正しい価格は、机の上にある実際のロットの価格であって、一般的な数値ではない。
例の処方では、各行の寄与は均等ではない。スイートオレンジはジュの30%を占めるが、ライブラリによれば量で世界最多の生産量をもつ精油で、大部分はオレンジジュース産業の副産物であり、価格が低いため混ぜ物をされることも少ない。体積で最大の行が、原価では最小になりうる。
ローズはその反対の端にある。ライブラリは精油1 kgに花3,000から5,000 kgと記録しており、上質なローズオットーは1 kgあたり8,000から15,000 USDに達することがある。50 mlのバッチにローズ0.2グラムなら、この価格帯でこの一行だけで約1.6から3 USDになる。ジュの3%が、原価の大半を占めうる。
だから一本の瓶の原価は、机の上の瓶の数ではなく、たいてい最も高い一つか二つの素材で決まる。香りの方向を変えずに原価を下げなければならないとき、最初に見直すのは最も高い行であり、始める場所は代替チャートだ。この処方にゼラニウムがいるのは、ひとつにはそのためである。
処方をバッチに拡大する
パーセントで書いた処方には大きさがない。変わることなく10 mlにも、50 mlにも、500 mlにもなれる。Blending 101 は初心者に簡単な拡大の方法を示している。10滴が100滴になる、つまり5 ml。パーセントで書いてしまえば、拡大は完成バッチの欄の数値を変えるだけだ。
拡大は、小さなバッチが隠す誤差もあらわにする。50 mlのバッチでは、ローズは0.225 ml、約4.5滴。滴の20%の幅を考えると、実際の量はおよそ3.6から5.4滴となり、完成品のローズは約0.36から0.54%のどこかに入る。この処方はどちらの端でも上限を下回るが、上限にもっと近い処方ならそうはいかない。
だから実際のバッチは、数えずに量る。計量はたいてい少量から多量へと進む。1グラム未満の行を先に量る。誤差がまだ直しやすいうちに。各行には、予定のグラムと実際に量ったグラムの両方を記録する。二つの列の差は、次のための情報になる。
大きなバッチにも、レッスン7と同じく熟成とろ過が必要だ。熟成の時間は体積に比例しない。500 mlの瓶に50 mlの十倍の時間が要るわけではない。それでも大きなバッチは、瓶に詰める前にムエットに浸し、承認した小さなバッチと比べるべきである。
完全な処方シート
最終的な処方シートは、八つのレッスンのすべてを一枚にまとめる。上部には名前、日付、製品の種類、該当する IFRA カテゴリー、バッチ、濃度。中ほどは表になる。精油名、ロット、ジュに対する%、製品に対する%、予定のグラム、量ったグラム、調べた上限、行の原価。
下部には、表に収まらないものを記録する。処方の制約となる化合物、ここではローズ由来のメチルオイゲノール。製品を販売するなら表示すべきアレルゲン。熟成期間、ろ過の日付、そして5分、1時間、1日のムエットの描写。レッスン2から守ってきたリズムである。
ライブラリのピラミッドビルダーと処方計算機は、どちらも選択をブラウザに保存する。紙やノートの処方シートが原本であり続ける。ブラウザは消えることがある。日付を書いたノートのページは消えない。
八つのレッスンは、ひとつの順序に従っている。鼻、時間、比率、アコード、モディファイアー、保留剤、瓶、数値。レッスンごとに、香りのノートに一列が加わる。最後のレッスンまでに、ノートには、別の誰かが開いて同じ瓶をもう一度つくれるだけのものがそろう。
香りを決めるのは鼻。処方を決めるのは、はかり。
正しく書いたひとつの数値が、一本の瓶を何年も保つ。
講座は、瓶ではなく一枚の紙で終わる。