処方 · 2026年11月

マッサージオイルのキャリア · 三つの分子

Carrier Oils for Massage Oil · Three Kinds of Molecule

処方

マッサージオイルの瓶の中身は、ほとんどがキャリアオイルである。ライブラリーの希釈表によれば、体に使う精油はたいてい2〜5パーセントにすぎない。だから手の下のすべり、なじむ速さ、肌に残る層は、ほぼすべてキャリアオイルが決める。スイートアーモンド、ホホバ、分留ココナッツは瓶の中では似て見えるが、三つの異なる種類の分子である。この記事では、それぞれの油の構造をたどり、なぜ肌への触れ方が違うのかを見る。

トリグリセリドとワックスエステル

ほとんどすべての植物油はトリグリセリドである。ライブラリーの植物油のページは、この構造を一つのグリセリン分子に三つの脂肪酸が結合したものと説明している。油の性質はおもにそれらの脂肪酸の比率から来る。パルミチン酸やステアリン酸のような飽和脂肪酸は室温で固形または濃い質感をつくり、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸のような不飽和脂肪酸は液状の油をつくる。

ワックスエステルは別の種類である。中心にグリセリンはない。その代わりに、一本の長鎖脂肪酸が一本の長鎖脂肪アルコールと、ただ一つのエステル結合で直接つながっている。できあがるのは、三本ではなく二本の腕をもつ、まっすぐで長い分子だ。ミツロウや多くの葉の表面をおおうロウにもワックスエステルが多く含まれ、そのほかに炭化水素や遊離脂肪酸などの成分もある。

だからこの記事の三つのキャリアオイルは、二つのグループに分かれる。スイートアーモンドと分留ココナッツはどちらもトリグリセリドだが、脂肪酸の長さがまったく違う。ホホバは別に立ち、ワックスエステルである。三つの油の感触と安定性の違いは、ほとんどすべてここから始まる。

ホホバ:液体のロウ

ホホバ(Simmondsia chinensis)は北米の砂漠の低木である。ライブラリーは、ホホバオイルが実はトリグリセリドではなく液体のワックスエステルであり、その構造が人の肌の天然の皮脂に近いと記している。2021年の総説では、ホホバの98パーセント近くがロウで、おもに長鎖の脂肪酸と脂肪アルコールのワックスエステルであり、遊離脂肪酸、脂肪アルコール、炭化水素がわずかに含まれるとされる。

ホホバの主な脂肪酸は11-エイコセン酸で、二重結合を一つもつ炭素20の鎖である。分析によって約70〜77パーセントを占め、次に炭素22のエルカ酸が約12〜14パーセント、オレイン酸が約9〜10パーセントと続く。数字は土と気候で変わるが、全体の姿は同じだ。長い鎖で、どの鎖も二重結合は一つだけである。

ロウと呼ばれるのは構造のためで、硬さのためではない。ホホバが固まるのは約7〜10°Cまで下がったときだけなので、ベトナムの気候ではいつも液体である。トリグリセリドが少なく、二重結合が少なく、ライブラリーが触れている天然のトコフェロールもあるため、ホホバはとても酸敗しにくい。ライブラリーは保存期間を5年以上と記しており、表の中でいちばん長い。

首と肩のためのオイルの記事は、すぐに乾き、べたつきを残さないという理由でホホバを主なキャリアに選んだ。ライブラリーのキャリアオイルの地図も、構造はロウであるにもかかわらず、ホホバをいちばん速くなじむ位置に置いている。

スイートアーモンド:オレイン酸とリノール酸

スイートアーモンド(Prunus dulcis)は、炭素18の脂肪酸でできた典型的なトリグリセリドである。ライブラリーの表には、オレイン酸60〜78パーセント、リノール酸17〜25、リノレン酸0.5未満、飽和脂肪酸6〜10とある。言いかえれば、油のほぼ全体が不飽和脂肪酸で、その大部分は二重結合を一つしかもたない。

シス型の二重結合は、どれも炭素鎖をある角度で折り曲げる。折れた鎖はぴったり詰まって並ぶことができないので、油は室温で液体になる。ライブラリーによれば、オレイン酸は油にバランスのよい感触、ほどほどのなじみ、酸化への安定性を与える。二重結合を二つもつリノール酸は、より乾いた感触とより速いなじみを与えるが、酸化も速い。

スイートアーモンドはその両方をもち、オレイン酸が先頭に立つ。ライブラリーはこれを、ほどほどになじみ軽いエモリエントの層を残すバランス型の油に分類している。ボディオイルやマッサージオイルに使われるグループである。ライブラリーはまた、ナッツアレルギーの人を除けばほとんどの肌質に合うこと、保存期間が約1年であることも記している。

乾季のための三つのボディオイルの記事の三つの処方には、どれもスイートアーモンドが、それぞれ違う比率で入っている。それがこの油のおなじみの役割である。両極のあいだに立つ、やわらかく、液状で、合わせやすい油だ。

分留ココナッツ:固い脂肪の液体の部分

ココナッツオイル(Cocos nucifera)は、ライブラリーによれば飽和脂肪酸を85〜92パーセント含む。バージンのものは24°C以下で固まり、ラウリン酸に富み、ココナッツの香りがする。分留したものはまったく違う。ライブラリーはこれを、MCTを分けとった、いつまでも液体のままの無臭の油と記している。

MCTは中鎖トリグリセリドのことである。製造では、炭素8と10の脂肪酸が、炭素12のラウリン酸の大部分を含むより長い鎖から分けとられ、ふたたびグリセリンに結びつけられる。できるのはおもに炭素8のカプリル酸と炭素10のカプリン酸のトリグリセリドで、供給元の規格ではラウリン酸はたいてい3パーセント未満とされる。化粧品の成分表では、この部分はたいていCaprylic/Capric Triglycerideと書かれる。

ここが化学の面白いところである。ほぼ全体が飽和脂肪酸なのに、液体なのだ。飽和の鎖はふつうぴったり並んで脂肪を固めるが、炭素8と10の鎖は短すぎて、分子どうしのあいだに十分強い引力を生まない。二重結合がないので、酸素が攻撃する場所もほとんどない。ライブラリーの保存期間の表にはココナッツ全般の行しかなく2〜4年とあり、分留ココナッツの供給元の規格ではたいてい24か月とされる。

なじみと肌の感触

ライブラリーにはキャリアオイルの地図があり、縦軸はなじむ速さで、いちばん遅い1からいちばん速い5まで分かれている。ホホバは5、分留ココナッツは4、スイートアーモンドは3に位置する。比べると、バージンココナッツは2、オリーブとシアバターは1である。これは油どうしを比べる相対的な目盛りで、絶対的な測定ではない。

ライブラリーは、肌に触れたときの感触が、リノール酸とオレイン酸の比率、そして分子の極性に直接関わると説明している。ドライ型の油は速くなじみ、べたつく膜を残さない。バランス型はほどほどになじみ、軽くやわらかな層を残す。グリーシー型はゆっくりなじみ、厚い膜を残す。ライブラリーはスイートアーモンドとホホバをバランス型に入れている。

分留ココナッツが軽いのは別の理由による。分子がほかの二つよりずっと小さく、脂肪酸の鎖は半分ほどの長さしかないので、油はさらりとしている。あるCaprylic/Capric Triglycerideの技術資料では、粘度は20°Cで約30 mPa·sとされる。だから三つの油は一列に並ぶのではなく、三つの違う点を受けもつ。速くなじむ長鎖のロウ、さらりとした短鎖のトリグリセリド、そしてほどほどになじむ長鎖のトリグリセリドである。

レ・マイのチリング マッサージオイル No.082は、まさにこの三つの油を使っている。スイートアーモンド、ホホバ、分留ココナッツのベースに、インド産の茶葉(Camellia sinensis)から採ったホワイトティーの精油を合わせたものだ。主役はホワイトティーで、軽やかで澄んだお茶の香りである。分留ココナッツはほぼ無臭で、ホホバの香りもごくかすかなので、その軽いお茶の香りはベースに覆われない。

二重結合、酸素、そしてベースの中の精油

ライブラリーによれば、植物油は不飽和脂肪酸の二重結合が酸化されることで酸敗する。二重結合が三つのリノレン酸がいちばん速く、二つのリノール酸が中間、一つのオレイン酸は遅い。分留ココナッツには二重結合がほとんどない。ホホバは長い鎖のそれぞれに二重結合を一つもつ。スイートアーモンドはリノール酸を17〜25パーセント含むので、三つの中で酸素がいちばん届きやすい環である。

混合物では、瓶全体の安定性はたいてい、いちばん安定性の低い成分で決まる。ライブラリーは保存期間を、スイートアーモンドが約1年、ホホバが5年以上、ココナッツ全般が2〜4年と記している。ライブラリーはまた、ビタミンE、つまりトコフェロールが多くの油にもともと含まれる天然の抗酸化物質で、保存期間を延ばすために0.5パーセントほど加えられることが多いとも記している。

キャリアオイルは精油の溶媒でもある。2パーセントの記事に書いたとおり、精油を薄めるものは油脂でなければならない。水は精油を一時的なしずくに散らすだけである。香りの分子は脂肪酸の鎖のあいだのすきまに溶けこみ、肌の上の薄い油の層からゆっくり揮発していく。

静けさ マッサージオイル No.026は、コールドプレスの植物オイルのベースにローズ Rosa damascena の精油をのせている。ローズはミドルに置かれ、軽く、肌に近く香る。くつろぎ マッサージオイル No.052は、コールドプレスの植物オイルにブルガリア産ラベンダー(Lavandula angustifolia)の精油を合わせたもので、クラシックで涼やかなフローラルである。二つの瓶の名前は香りの名前であり、肌に触れるのはキャリアオイルである。

二つの油はトリグリセリドで、一つはロウである。

短い鎖はココナッツを軽くし、二重結合はアーモンドをやわらかくし、一つのエステルはホホバを長もちさせる。

精油は瓶に香りを与え、キャリアオイルは手に感触を与える。