精油20滴を、ムエットから去る速さで三つのグループに分ける。ブレンド講座のレッスン3は、トップ、ハート、ベースの出発点となる枠を定め、そのうえで、なぜその同じ枠を調整しなければならないのかを示す。
出発点としての枠
レッスン2でつくった揮発表は、机の上の瓶を三つのグループに分けた。数時間のうちにムエットから去るもの、一日もつもの、3日後もまだ識別できるもの。この三つのグループがトップ、ハート、ベースである。次の問いは、それぞれのグループがブレンドのどれだけを占めるべきか、だ。
ブレンドの手引きは、たいてい出発点の枠を示す。ライブラリのBlending 101 のページは、トップ30%、ハート50%、ベース20%という古典的な比率と、初心者向けの練習を載せている。ベルガモット3滴、ラベンダー5滴、シダーウッド2滴。ライブラリのピラミッドツールは25、45、30%で開く。ほかの手引きは、トップ20から30%、ハート40から50%、ベース25から35%という幅を挙げる。
数値は数パーセントずつ違い、その違いが最初の情報になる。どのブレンドにも正しい比率はひとつもない。枠は出発点にすぎず、直すためのものだ。枠のないブレンドには、直す方向がない。枠のあるブレンドなら、どの変更も測ることができる。
枠は製品によっても動く。同じ Blending 101 のページは、コロンにはより重いトップ、約50%を与え、オードパルファムではハートとベースにより多くの重みを移す。香りがどこまで届くべきかは製品が決め、層の比率はその決定に従う。
1滴は1滴ではない
1滴は体積であり、約0.05 mlである。ライブラリは1 mlあたり20滴として扱い、粘度によって約20%の幅をみる。ベチバーやサンダルウッドのような濃い精油は、大きな滴になる。体積の段階ですでに、二つの瓶から落とした2滴は等しくない。
より大きな違いは、一滴がどれだけの匂いを運ぶかにある。滴数で数えた30、50、20という比率は、どの滴も同じだけ寄与すると黙って仮定している。そうではない。ピラミッドツールははっきり書いている。イランイラン1滴とスイートオレンジ1滴は、同じ量の匂いを出さない。
最も簡単な試験には、二つの瓶を使う。スターアニスとスイートオレンジである。スターアニスの精油は (E)-アネトールを71から92%含み、スイートオレンジはほぼすべてがリモネンで、産地によって86から96%。小瓶にアニス1滴とオレンジ10滴を入れ、ムエットを浸す。この試験では、たいていアニスがムエットの方向を決める。オレンジの10滴は下に明るい地をつくるが、香りの形は、そのたった1滴のものだ。
紙の上の比率は、アニス1に対してオレンジ10。鼻が聞く比率は、そのほぼ逆である。だから滴数だけで書いた処方は、まだその香りを表していない。
匂いの強さと閾値
どの分子にも固有の匂いの閾値がある。試験パネルの半数が感じとる最低濃度だ。ライブラリの用語集は、閾値が分子によって何桁も異なると記している。体積の大半を占める成分が、匂いを決めるとはかぎらない。
調香ではもうひとつの数値を加える。化合物の濃度とその閾値の比で、匂い活性値と呼ばれる。比が1を上回るとき、その化合物は全体の匂いに寄与する可能性が高い。数パーセントしか含まれなくても閾値のきわめて低い成分は、精油の十分の九を占める成分を押しのけることがある。
匂いの強さと揮発の速さは、別々の二つの軸である。揮発は香りがどれだけ長くとどまるかを語り、強さはとどまるあいだどれだけ大きく鳴るかを語る。スイートオレンジは速く揮発し、とくに強くもないので、ムエットの上では早く退く。パチョリは揮発がきわめて遅く、ライブラリの揮発チャートでは400時間以上識別でき、わずかな割合でブレンド全体を染めるのに足りる。
鼻も疲れる。数分嗅ぎつづけると、その匂いの知覚は落ちる。嗅覚疲労という用語だ。評価のたびに間をおく必要がある。レッスン1から続けてきた、嗅ぐ、休む、書く、のリズムで。
だから層の比率は、問題の半分にすぎない。もう半分は瓶ごとの強さで、これはどんなスポイトでも測れない。測れるのは、ムエットと時間だけだ。
トップが薄すぎるとき
トップが薄すぎるブレンドは、開いた時点ですでに重い。ムエットを浸したばかりなのに、最初に鼻に届くのは花か木で、その前に明るいひとときがない。たいてい紙の上の比率は間違っていない。トップの精油が、ただ速く去りすぎるのだ。
ライブラリの揮発チャートでは、圧搾レモンがムエットの上で約4時間、スイートオレンジが推定6時間、コリアンダーシードが8時間。ローズは168時間と記されている。5時間目には柑橘はほぼムエットを離れているが、フローラルの部分はまだ自分の時間の短い区間を過ぎたにすぎない。
最初の修正はトップに滴を足すことだが、それには限界がある。オレンジを増やしてもオレンジが長くもつわけではなく、開きが大きくなるだけだ。二つ目は、尾の長いトップの精油を選ぶこと。ピンクペッパーはトップとハートのあいだにあり、チャートには近縁種から取った147時間という値が載っている。三つ目は、ハートに明るさの一部を担わせること。酢酸リナリルを45から74%含むクラリーセージがそうするように。
トップに足すときは、滴数と、トップノートがムエットから消える時点の両方を記録する。トップは量だけでなく、長さで判断する。
ベースがすべてを覆うとき
逆の誤りのほうが多い。ベースは大きく遅い分子でできていて、その多くは強い。パチョリ、ベチバー、樹脂、重い木。最初の1時間、それらは黙っているように見える。一日たつと、残っているのはそれらだけだ。
ピラミッドツールは、シナモン、クローブ、ベチバーのような強い精油はわずかな割合で足りると記している。Blending 101 は逆の注意を与える。トップとハートだけのブレンドは1、2時間で消え、支えるには少なくとも10%のベースが必要だ、と。二つの注意のあいだに、狭い帯がある。
ベースが重すぎるしるしは、浸したばかりのムエットが最初の1分から土や樹脂の匂いを放ち、ハートがいつまでも出てこないことだ。修正は、半分ずつではなく、1滴ずつベースを減らすこと。20滴のうちパチョリ1滴は5%、2滴なら10%。この小さな一歩ひとつで、24時間目のムエットの形は変わる。
問題が滴数ではなく素材にあることもある。蒸留したてのパチョリには樟脳のような角がある。ライブラリは、熟成したパチョリのほうがなめらかで丸く、年数で価値が上がる数少ない精油のひとつだと記している。同じ比率でも、熟成年数の違う二つのロットのパチョリは、二つの違うベースをつくる。
ピラミッドツールで試す
ライブラリのピラミッドビルダーは、合計の滴数を層の割合で分ける。精油はあらかじめ揮発チャートでグループ分けされ、どの瓶も矢印ボタンで別の層へ移せる。初期の割合は25、45、30%である。
このレッスンでの使い方は、二つの版をつくることだ。一つ目は初期の枠に従い、合計20滴。二つ目は同じ瓶のまま、ムエットが示したことに合わせて比率を変える。最も強い精油を1滴減らし、最も弱い精油を1滴増やす。二枚のムエットを同時に浸し、レッスン2と同じく、5分、1時間、1日で書きとめる。
ツールの滴数は精油どうしの比率であって、肌に使う濃度ではない。肌に触れる前に、ブレンドは必ず希釈し、各精油をそのページにある上限より下に保つ。たとえばスターアニスの皮膚への最大使用濃度は1.75%で、妊娠中、授乳中、5歳未満の子どもには禁忌である。上に書いたアニス1滴とオレンジ10滴の試験は、ムエットのためだけのものだ。
二つの版を終えると、香りのノートに新しい一行が加わる。正しい比率ではなく、紙の上の比率と鼻が聞く比率とのあいだの距離である。レッスン4は問題を二つの瓶に絞り、その距離を九つの比率で測る。
比率は滴で書く。香りは滴では数えられない。
紙の上では、三層の枠は動かない。ムエットの上では、時間ごとに動く。
よい処方とは、何度も直された処方のことだ。