レモン精油に浸したムエットは、約四時間で香りを失う。パチョリに浸したもう一枚は、四百時間を過ぎてもまだ識別できる。二つの数字はライブラリの同じ表に並んでいて、香水がどれだけもつかという問いに、どんな単一の数字よりもよく答えている。持続時間は一つではない。それぞれの速さで去っていく、たくさんの分子があるだけだ。
一つの数字では答えられない問い
香水がどれだけもつかという問いは、ふつう時間での答えを期待している。だが香水は数十から数百の分子でできていて、それぞれが固有の蒸発速度をもつ。持続と呼ばれているものは、実のところ、最も遅い分子が鼻に気づかれるだけの量で残っている時間である。
ライブラリの揮発性チャートは、Lê Mai が扱う57の精油を、原液のままムエットの上で香りが識別できる時間で並べている。データは The Good Scents Company のもの。両端の開きは大きい。ローズマリーと圧搾レモンは約四時間、ラベンダーとマンダリンは約八時間、ローズは約168時間、フランキンセンスは約188時間、そしてパチョリ、サンダルウッド、バニラ、ミルラは出典の上限である400時間に達する。
ライブラリ自身がこれらの数字の限界を記している。ムエットの上の時間は、肌の上や石けん、キャンドルでの持続時間ではない。温度、希釈、原料のロット、鼻の感度が、どれも数字を動かす。このチャートが支えるのは素材どうしの相対的な比較であって、特定の香水がいつ消えるかの予報ではない。
軽い分子、重い分子
分子の揮発性は蒸気圧で測られる。ライブラリの用語集によれば、蒸気圧の高い分子は先に鼻に届いて早く消え、低い分子は長く残る。大まかな目安は分子量だ。柑橘の果皮の主成分リモネンは約136 g/mol、リナロールは約154、ベチバーのクシモールは約220、アンブロキサイドは約236。
だからベルガモット精油は、リモネンを約27〜52%含み、ライブラリが挙げる多くの古典的な香水でトップノートとして現れる。1709年のファリナのオーデコロンから1966年の Eau Sauvage まで。香りを明るく開くが、残る役目は与えられていない。
反対の端にはベースがある。ライブラリのベチバーのページは、根を24〜48時間かけて蒸留すると記す。多くの素材よりはるかに長い。重い化合物を根から引き出すには時間がいるからだ。この精油はクシモールやベチボンなどのセスキテルペノイドに富み、持続性のある保留剤として記録されている。1950年に Firmenich がスクラレオールから合成した成分アンブロキサイドを、ライブラリはとても拡散性が高く、とても長く残ると記す。
重さがすべてではない。バニリンは約152 g/molでリナロールより軽いが、バニラは揮発性チャートの上限にいる。分子の形や、表面へのとどまり方も効いてくる。重さは、柑橘が短く、ウッドやレジンが長く残る理由を理解するための、最初の入口にすぎない。
濃度と溶剤
同じ香りの処方でも、いくつかの濃度でつくることができる。ライブラリの用語集によれば、オーデコロンはふつう香料を約2〜5%、オードトワレは約5〜15%、オードパルファムは約15〜20%、エキストレは約20〜30%含む。ライブラリは、これが業界の慣習であって法的な基準ではなく、各メゾンが独自に水準を決めていると強調している。
濃度が高いほど、ふつう香りは長くもつ。遅い分子がより多く肌にのり、検知閾値を下回るまでに時間がかかるからだ。だがその関係は直線ではない。ウッドとムスクに富むオードトワレが、柑橘と軽いフローラルを中心にしたオードパルファムより長く残ることもある。ライブラリは、同じ名前の香水の EDT と EDP が別々の処方でありうることにも触れている。
残りの話は溶剤である。香水は高濃度のアルコールを溶剤に使う。アルコールは最初の数分で蒸発し、最も軽い分子の一部を連れていく。アルコールの代わりにキャリアオイルでつくるパフュームオイルは、よりゆっくり蒸発し、肌の近くにとどまる。同じ精油のブレンドでも、溶剤を変えれば、香りが去っていくリズム全体が変わる。
肌、髪、布
香りを受ける表面もまた変数である。肌は温かいので、その上の分子は冷たい表面より速く蒸発する。肌は香りの一部を吸収し、それ自体の匂いももつので、一つの香水が二人の上で違って開くことがある。揮発性チャートが紙の上で測るのはそのためだ。ムエットは中立で、体温もなく、素材どうしを比べることができる。
布は香りを違ったふうに保つ。繊維は多孔質で冷たく、血流へ何も吸収せず、ふつうは肌より長く重い分子を保つ。一方で、琥珀がかった褐色の精油のような色のある素材は、淡い色の布に跡を残すことがある。髪はその中間にある。繊維だが、頭皮で温められ、たえず動いている。
表面にまつわる安全上の注意が一つある。ライブラリの光毒性のページによれば、ベルガモットのような圧搾した柑橘の精油は、日光の下で肌に光毒性反応を起こすことがある。香りを長くもたせたいからといって、日にさらされる肌に多く吹きつける理由にはならない。ライムの果皮と日光についての記事が具体的な上限を示している。
つけている本人は、たいてい最も下手な判定者である
鼻はとても速く順応する。ライブラリの用語集によれば、嗅覚疲労とは連続してさらされたあとに匂いの知覚が落ちることで、回復するにはしばらく匂いから離れればいい。香水を吹きつけたばかりの人は何時間もその香りの中にいるので、周りの人がまだ嗅げるのに、香りが消えたと最初に決めてしまうことが多い。
香水がすぐ消えるという不満の多くは、実は注意を払うのをやめた鼻である。嗅覚は変化に気づくように組み立てられていて、一定の匂いを見張るようにはできていない。簡単な確かめ方は、ほかの人に尋ねるか、数分部屋を出てから手首を嗅ぐことだ。
もう一つの現象がある。特異的無嗅覚症だ。ライブラリによれば、嗅覚はほかはふつうなのに、ある特定の化合物だけが嗅げない人がいて、一部の合成ムスクではそれがかなりよくある。ムスクのベースで組まれた香水は、肌の上でとても長く残りながら、つけている本人はその部分をまったく感じないこともある。
持続は、拡散とも分けて考えるべきだ。ライブラリはシヤージュを、つけた人が通り過ぎるとき空気に残る香りの軌跡と定義し、テナシティを、表面そのものに香りがとどまる時間としている。肌に長くとどまりながら、とても近くにしか香らない香りもある。最初の一時間は遠くまで届き、そのあと退いていく香りもある。
ムエットで持続を試す
言い伝えに頼るより、試香紙で直接観察するのが最も確かな方法だ。紙片を浸すか吹きつけ、ライブラリが勧めるように名前と時刻を書き、風通しがよく日の当たらない場所に置く。十五分後、一時間後、四時間後、八時間後、そして翌日に、また嗅ぐ。性格が変わる時点と、ベースだけが残る時点を記録する。
二本の瓶を比べるなら、同じ紙を二枚、同じ量、同じ時刻で。嗅ぐ合間には紙から離れ、鼻を回復させる。同じ試験を小さな布切れと手首でも繰り返せば、一つの香水が三つの表面でどう違うふるまいをするかが見える。
この試験は絶対的な数字を出さないが、地図を出す。香りのどの部分が早く去り、どこが残り、その瓶の本当のベースが何なのか。香りを長くもたせたい人にとって、その地図は、広告に刷られた時間の数字よりたいてい役に立つ。香りをとどめる素材についての記事が、香水のベースへと話を続ける。
香りは一度に去りはしない。
分子ひとつずつ、軽いものから先に、重いものは最後に去る。
どれだけもつかに答えが出るのは、問いが「香りのどの部分が」に変わってからだ。