香水にも使用期限はある。ただ、決まった日付があるわけではない。酸素、光、熱がリモネンなどの軽い分子を酸化させるため、まず柑橘のトップが変わる。ウッディやレジンのノートははるかに長く保たれる。密閉して暗く涼しい場所に置いた瓶は、窓辺に置きっぱなしの瓶よりずっと長く香りを保つ。
窓辺の一本
同じ香りの瓶が二本、同じ日に買われた。一本は箱に入ったまま、引き出しの中にある。もう一本は窓辺に立っている。透明なガラスで、毎日午後には日が当たる。五年後、開けてみると、二本はもう同じ香りではない。
香水に期限はあるのか。この問いに短い答えはない。期限はある。ただしその限界は、箱に印刷された数字よりも、瓶の保管のされ方に左右される。香水が変わるのは、香りの分子が酸素と反応するからで、その反応は光と熱のもとで速まる。最初に変わるのはトップ、リモネンのような柑橘の分子がいるところだ。ウッディ、レジン、ムスクのノートの変化はずっと遅い。
だから古い瓶は、始めから終わりまで均等に傷むわけではない。多くの場合、立ち上がりは瑞々しさを失い、少し刺々しく、あるいは平板になる。一方で一時間後のベースは、ほとんど元のままだ。よく保管された瓶なら、小さな変化だけで何年も過ごせる。
ここからの記述は、精油のために書かれた Lê Mai ライブラリの保管のページに拠っている。香水はアルコールに溶かした香料の濃縮物であり、中の分子は同じ反応を受ける。アルコールは分子を薄めるが、酸素と光から守ってはくれない。
酸素とリモネン
リモネンは、剥いたばかりのオレンジの皮の香りがするモノテルペンである。スウィートオレンジ精油ではおよそ84〜96%を占め、ベルガモットではおよそ27〜52%。柑橘で始まる香水のほぼすべてに含まれている。
リモネンの分子には炭素どうしの二重結合があり、二重結合は空気中の酸素が取りつく場所である。酸化によってヒドロペルオキシドが生じ、続いてリモネン1,2-オキシド、カルボン、カルベオールといった生成物ができる。この過程は不可逆で、一度酸化した分子を元の状態に戻す方法はない。
最初の結果は香りに出る。瑞々しいオレンジのノートが痩せ、テレピン油や古い紙のような刺々しさに置き換わる。二つ目は安全性のデータにある。ライブラリがまとめた研究によれば、酸化したリモネンは新鮮なリモネンよりも明らかに多くのアレルギー性接触反応を引き起こし、複数のデータを合わせるとその増加はおよそ10倍と示唆されている。
リモネンだけではない。ラベンダーやベルガモットに多いリナロールも空気中で酸化し、ヒドロペルオキシドを生じる。ベルガモットの主なエステルである酢酸リナリルは、水によって加水分解され、リナロールと酢酸になる。こうした分子はトップとハートに集まっているので、香水の立ち上がりは、時間がもっともはっきり跡を残す場所になる。
光と熱
光、とくに紫外線はフリーラジカルを生み、酸化を速める。さらに、新鮮な原料にはなかった分子もつくり出す。ライブラリに記録されたデータによれば、紫外線に50分さらしたスウィートオレンジ精油には、ピペリトン、フォトシトラールA、そして少なくとも十数種の新しい成分が現れた。
透明なガラスは紫外線を通す。多くの香水瓶は中の液体を見せるために透明で、だからこそ添えられた紙箱には実際の役目がある。箱に入れて戸棚にしまった瓶は、ガラスが遮れない光の大半を避けられる。
熱は、ほとんどの化学反応を速める。ライブラリはレモン精油での比較を引いている。5 °Cで保管し、月に3分だけ蓋を開けたものは、12か月のあいだモノテルペンの含有量がほとんど変わらなかった。25 °Cで保管し、毎日3分蓋を開けたものは、同じ期間にその含有量が97%から31%未満にまで落ちた。二つの条件は温度と開ける頻度の両方で異なり、そのどちらも効いている。
高温多湿の気候では、このことがより露わになる。屋外に停めた車の中、コンロの近く、浴室に置いた瓶は、毎日熱と湯気を受ける。エアコンの効いた部屋の引き出しのほうが、はるかに安定している。
瓶の中の空気
満杯の瓶では、液面の上の空気はごくわずかだ。使うたびに液面が下がり、その分を空気が埋める。残りが三分の一になるころには、残った液体に触れる酸素は、初めて開けたときよりずっと多い。
だから瓶の最後の部分は、同じ液体であっても、最初の部分より早く変わることが多い。精油について、ライブラリの保管のページは、残量が30%を下回ったら、より小さな瓶に移し替えてヘッドスペースを減らすことを検討してよいとしている。
スプレー瓶にはひとつ利点がある。密閉されたアトマイザーはスポイトの蓋のように開かないので、使うたびに入る新しい空気が少ない。スプラッシュ瓶は使うたびに開けるので、より多くの空気に触れる。大きな瓶から小分けにしたサンプルも同じで、小分けのたびにもう一度開けることになる。
瓶に入る空気は湿気を運ぶ。水はエステルを加水分解する。たとえば酢酸リナリルはリナロールと酢酸になり、液を濁らせ、酸化を促す。湿度の高い気候では、開けるたびに水蒸気が少しずつ入り、液面の上の空間が大きいほど、含まれる湿気も多い。
実際の使用期限
ヨーロッパで売られる化粧品には、小さな記号がついていることが多い。蓋の開いた容器の絵に、24Mや36Mといった数字。これは開封後の使用期間である。ヨーロッパの規則では、保存可能期間が30か月以上の化粧品は使用期限の表示を要さず、代わりに開封後どれだけ使えるかを示す。多くの香水瓶が、具体的な日付ではなくこの記号をつけている。
記号の数字はメーカーの約束であって、香りが消える日ではない。よく保管された瓶は、その期間を過ぎてもほぼ無傷かもしれない。日なたに置かれた瓶は、それより前にはっきり変わるかもしれない。実際の寿命は、処方と保管の足し算である。
処方が決めることは大きい。暗く、密閉され、涼しい瓶で保管した開封済み精油についてのライブラリのデータは、グループごとの大きな開きを示している。柑橘はおよそ6〜12か月、軽いフローラルは12〜24か月、スパイスとハーブは24〜36か月、レジンとウッドは48〜96か月、パチュリとサンダルウッドは60〜120か月で、年月とともに深まることもある。軽い柑橘の香水は、重いウッディ・レジンの香水よりはるかに影響を受けやすい。
瓶が変わったしるしは、たいてい順番に現れる。いちばん早いのは香りで、層を失った平板で刺々しい立ち上がり。次に色が濃くなる。ただし色の変化だけで傷んだとは限らない。香りと色の両方が変わった瓶は、もう調香師が組み立てた香りではなく、リモネンの安全性データは、それを肌に使わない理由になる。
開封した瓶の保ち方
香水を変える三つは、酸素、光、熱である。保管とは、完璧を目指すことなく、その三つを同時に減らすことだ。半年で使い切る瓶は、何年も置いておく瓶ほどの手間はいらない。
光を避ける。瓶は箱か閉じた戸棚にしまい、窓辺や灯したキャンドルの近くには置かない。熱を避ける。涼しく安定した場所に置き、車、コンロ、浴室から離す。空気を避ける。使ったらすぐ蓋を閉め、スプラッシュ瓶はできるだけ開ける回数を減らす。
ライブラリの保管のページによれば、場所があるなら冷蔵庫は精油のよい置き場である。香水の場合は、低い温度よりも安定した温度のほうが大切だ。冷たい場所と暖かい場所を何度も行き来した瓶は、ワックスや溶けにくい成分が析出して濁ることがある。涼しい部屋の暗い引き出しで、たいていは十分である。
届いたばかりの精油のロットという記事は、精油のロットが届いたときにどう確認し、保管するかを記録している。香りの外にあるしるしは、香り以外に瓶が語ることを論じている。
香水の瓶は、時間の中で静止しない。
トップが先に去り、ウッドが最後に残る。
暗さと涼しさが、残ったものを保つ。