Lê Mai の包装は一枚の包み紙だけだ。絵もない。文字もない。紙だけ。本稿では、何ひとつ印刷しない理由を記録する。
手のなかの一枚の紙
Lê Mai の石けんは一枚の再生紙で包まれている。紙は淡いクリーム色で、厚さは約80gsm、縁はまっすぐに裁たれている。絵も、ロゴも、文字もない。
石けんのまわりを折り、合わせ目を小さな紙ラベルで留める。ラベルには Lê Mai の名前、製造日、石けんの名前。包装にある情報はそれだけだ。
手に持つと軽く、やわらかく、わずかにむらがある。光沢はなく、完全に平らでもない。ありふれた物を包む、ありふれた一枚の紙のように。
漂白しない再生紙
Lê Mai が使うのは無漂白の再生紙だ。使用済みの古紙パルプからつくられ、塩素漂白も、白さを出すための酸化チタンも加えていない。
仕上がりは自然なクリーム色で、ときに竹や木の繊維の濃い斑点が混じる。まったく同じロールはふたつとない。それは原料の痕跡であり、消し去らない。
純白の紙は漂白や加工の工程が増えるぶん高価だ。無漂白の再生紙はそれより40〜50%安い。Lê Mai は包装への出費を抑え、そのぶんを製品の原料にまわす。
ラベルを分ける理由
ラベルは3cm × 5cmの小さな紙片で、クラフト紙に黒で印刷する。記すのは Lê Mai の名前、石けんの名前、製造日、ロット番号。
ラベルを別に刷るのは、バッチごとに必要な情報が違うからだ。4月のバッチは7月とは異なる。ロット番号も変わる。包み紙に直接印刷すれば、バッチのたびに新しい包装が要る。無駄である。
ラベルを分ければ、一種類の包み紙ですべての製品をまかなえる。バッチが変わればラベルだけを替える。製品名が変わればラベルだけを作り直す。包み紙が古くなることはない。
印刷にかかるもの · インク、版、機械
小ロットの紙への印刷は、外から想像するより高くつく。包み紙1000枚にフルデザインを刷るには、デザイン(500万〜1,500万ドン)、オフセット印刷の版(200万〜500万ドン)、機械のセッティング(100万〜200万ドン)、インク(50万〜100万ドン)が要る。合計で1000枚あたり1,000万〜2,500万ドン。
一方、無地の紙1000枚はわずか30万〜50万ドン。印刷を加えると、包装コストは30〜50倍に跳ね上がる。
その差額を、よりよいオイル原料や長い熟成期間にまわせば、使う人に本当の価値が届く。包装の印刷にまわせば、使う人が受け取るのは一週間で捨てられる見た目だけだ。
製品が語るとき
印刷しない包装には、ひとつの暗黙の論理がある。製品が十分によければ、包み紙に売り文句は要らない。
包みを開けると、使う人は石けんそのものと向き合う。加工された写真を通してではない。スローガンを通してでもない。原料の香りが第一印象になり、手ざわりが第二の印象になる。
製品がそのふたつを越えれば、包装がそれ以上語る必要はない。越えられなければ、美しい包装でも救えない。
これは製品がみずからに課す試験のようなものだ。経済ではなく、信頼の選択である。
一枚の紙。一枚のラベル。ひとつの石けん。
包装のデザインはない。あるのは製品のデザインだけ。