木の色をした乾いた果実。八つの角が星形に並び、角のひとつひとつに艶のある種がひと粒ずつ入っている。ランソン(Lạng Sơn)にはこの実をつける木が43,370ヘクタールあり、その香りのほとんどすべては、ひとつの分子、アネトールにある。
Illicium verum の八つの角をもつ果実
スターアニスの果実は花ではない。いくつかの言語では花の名で呼ばれているのだが。これは軸のまわりに八つの小さな袋果が並んだ集合果で、袋果はそれぞれ裂けてひとつの角になり、ひと粒の種を抱える。乾くと角は硬くなり、色は木のような茶色に変わり、星の形がはっきりする。
この木は Illicium verum、シキミ科(Illiciaceae)の小さな常緑樹である。ライブラリは、原産地を中国南東部とベトナム北東部と記録している。流通名には đại hồi、hoa hồi、star anise、badian などがある。Lê Mai ライブラリのスターアニスのページは、そのすべてを残している。
ベトナムで、この木ともっとも強く結びついた名前はランソンのスターアニスである。ランソンのスターアニスの面積は43,370ヘクタールで、全国のおよそ70%を占め、そのうち約28,000ヘクタールが結実している。クアンニン(Quảng Ninh)は約8,600ヘクタール、カオバン(Cao Bằng)は約4,500ヘクタール。国全体では年におよそ22,000トンの乾燥果実が収穫され、中国に次いで世界第2位である。
スターアニスには、北部の石灰岩の山地の冷涼な気候が必要だ。だからベトナムのスターアニスの地図は、ひと握りの国境の省とほぼ重なる。2025年、ベトナムは14,307トンのスターアニスを輸出し、その額は58.7百万米ドルだった。大半は乾燥果実のまま香辛料の取引へ出ていき、蒸留器に入るのはその一部である。
ほとんど同じ果実をつける木がもうひとつある。シキミ、Illicium anisatum は有毒で、乾燥すると目で見て本物のスターアニスと区別するのはほぼ不可能だ。この点は、この記事の終わりにもう一度戻ってくる。
ランソンの二度の収穫
スターアニスの木は年に二度実をつけ、二つの収穫は同じではない。主な収穫は hồi mùa と呼ばれ、8月から9月ごろに熟す。実は大きく、角は厚い。もうひとつの収穫は hồi tứ quý と呼ばれ、3月から4月ごろで、実は少ない。
ライブラリに記録されたスターアニスの収穫月は3月、4月、8月、9月で、この二つの収穫と一致する。収穫月は天候によって、年ごと、地域ごとに一か月ほどずれることがある。これらの数字は枠組みであって、決まった日付ではない。
摘み取った実は天日で干すか、窯で乾燥させる。乾燥果実が主な商品で、スパイスのブレンドへ、スープへ、国境の卸売市場へと向かう。ベトナム料理では、スターアニスはフォーの一杯の中ですぐにそれと分かる香りのひとつだ。精油は、その流れの小さな支流にすぎない。
ランソンのスターアニスは2007年から地理的表示として保護されている。番号は00007で、ベトナムで最初期の地理的表示のひとつである。登録書類は、果実を保護対象の産品としている。香りの作物がこれほど早く登録されたことは、北部の山地の経済におけるその位置を示している。
二度の収穫、一本の木、ひとつの山地。スターアニスの香りは主な収穫と二番目の収穫とでほとんど変わらないが、実の大きさと収量は変わる。
乾燥果実を蒸留する
スターアニス精油は果実から水蒸気蒸留され、葉から蒸留することもできる。ライブラリによれば、果実はまず乾燥させてから蒸留する。蒸気が果実の塊を通り抜け、揮発性の分子を運び、凝縮して水から分離する油の層になる。
ベトナムの試料では、果実の精油でおよそ90%、葉の精油でおよそ87%の trans-アネトールが得られた。ライブラリのより広いデータでは、スターアニス精油の (E)-アネトールは71.2〜91.8%。組成の上で、もっとも凝縮した精油のひとつである。
瓶の残りは、より小さな成分でできている。フェニクリンが0.5〜14.6%。エストラゴールが0.3〜6.6%。リモネンが最大でおよそ5%、リナロール、α-ピネン、β-カリオフィレンがそれぞれ1〜2%ほど。サフロールがごく低い濃度、最大0.1%で含まれることがある。
この凝縮こそが、スターアニス精油を混ぜ物しやすくしている。ライブラリによれば、この精油はしばしば工業用アネトールで薄められる。(Z)-アネトールの割合が比較的高いグレードである。(Z)-アネトールは (E) 体より毒性が強い。本物のスターアニス精油では、(Z) 体は痕跡量から0.4%までしか現れない。分析表を読むとき、この数字がひとつの目印になる。
蒸留器は果実に何も足さない。揮発する部分を木質の部分から分けるだけだ。瓶の中にあるのは、果実が木から運んできたものである。
アネトール — ひとつの分子、三つの植物
近縁ではない三つの植物が、同じ甘さを与える。スターアニスはシキミ科に属する。アニス、Pimpinella anisum と、スウィートフェンネル、Foeniculum vulgare は、どちらもセリ科(Apiaceae)で、地中海の草本植物である。三つが共有しているのは形ではなく、ひとつの分子だ。
(E)-アネトールは分子式 C₁₀H₁₂O、分子量148.20 g/molで、フェニルプロペノイドのエーテルに属する。ライブラリはその香りを、甘草、アニス、甘く温かいと記す。アニスのノートの定義そのものと言ってよい。アネトールは味も甘く、ある文献は砂糖の13倍甘いと記録している。
三つの精油のアネトール含有量は近い。アニス精油は75.2〜96.1%。スウィートフェンネル精油は58.1〜92.5%。スターアニス精油は71.2〜91.8%。三つとも、アネトールと構造の近い分子エストラゴールを少量含む。
三本の瓶の違いは、残りの部分にある。スターアニスにはフェニクリンと少しのサフロールがある。スウィートフェンネルはリモネンを最大21%、フェンコンを最大8%加える。アニスはほぼ純粋なアネトールだ。ムエットの上では、スターアニスはより温かく丸く、スウィートフェンネルには青い縁があり、アニスはもっとも直截で、もっとも甘い。
アネトールは、ある種のアニスの蒸留酒が水を加えると白く濁る理由でもある。この分子はアルコールには溶けるが水には溶けない。水が入ると、アネトールはごく小さな滴になって分離し、乳白色のマイクロエマルションをつくる。この現象はウーゾ効果と呼ばれる。ひとつの分子、三つの植物、そして色の変わる一杯のグラス。
スターアニス精油はなぜ寒さで固まるのか
寒い夜を越したスターアニス精油の瓶に、白い結晶が見えたり、濁った塊にとろりと固まったりすることがある。これは傷んだしるしではない。瓶のほぼすべてを満たす分子の、物理的な性質である。
純粋なアネトールの融点はおよそ20〜21°Cである。暖かい日の室温では液体だ。温度がそれを下回ると、分子が並んで結晶になり始める。最大で十分の九がアネトールである精油は、その性質をそのまま引き継ぐ。ただし他の成分があるため、混合物として実際に固まる温度は少し低くなる。
ランソンでは、冬にとても冷える夜が来る。倉庫のスターアニス精油のドラム缶はすっかり固まり、暖かくなるとまた溶ける。調香師にとってこれは、量る前に瓶をやさしく温め、澄んで流れるようにしておくべきだということを意味する。固まった部分と液体の部分とで、アネトールの割合が異ならないように。
ひとつ区別しておくべきことがある。空気にさらされたスターアニス精油は酸化し、(Z)-アネトール、アニスアルデヒド、アニスケトンを生じる。ライブラリによれば、これらの酸化生成物は感作のリスクを高めうる。寒さで固まる精油は正常だ。年月とともに香りが変わる精油は、そうではない。
肌の上のスターアニス — 使用の限度
スターアニス精油の限度は、アネトールからではなく、二つの小さな連れから来ている。ライブラリによれば、(E)-アネトールそのものはげっ歯類で発がん性を示さない。懸念はエストラゴールとサフロールにある。アネトールと構造は近いが、毒性の性質が異なる二つの分子である。
ここから、スターアニス精油の皮膚への最大使用濃度は1.75%とされている。エストラゴール6.6%、サフロール0.1%を含む精油試料にもとづく数字だ。IFRA と EU の規則では、化粧品中のサフロールは0.01%に制限されている。スウィートフェンネルの皮膚への最大使用濃度は2.5%である。
アネトールは実験室の試験で弱いエストロゲン様の作用を示す。そのためライブラリは、妊娠中、授乳中、子宮内膜症、エストロゲン依存性のがん、そして5歳未満の子どもについて、スターアニス精油をすべての経路で禁忌としている。これは安全性のデータであって、使い方の助言ではない。この記事は、スターアニスが体に及ぼす作用については何も述べない。
シキミのことは、ここでもう一度繰り返しておく必要がある。Illicium anisatum は有毒で、ライブラリによれば、スターアニス茶に関連した乳児の神経毒性の事例は、たいていこの種の混入による。2003年、米国食品医薬品局は約40件の中毒を受けて、スターアニスの茶について警告を出した。ベトナムの精油のページが言うとおり、果実でも精油でも、買うときにまず大切なのは出どころの明確さである。
1.75%という限度があっても、処方の中でスターアニスが動ける余地は十分に残る。それはただ、甘い分子が、それほど甘くない分子と連れ立って旅をすることがある、と記録しているだけだ。
八つの角、それぞれにひと粒の種、十分の九がひとつの分子。
21度が、液体と固体の境目になる。
スターアニスの香りの残りは、小数点以下の小さな数字の中にある。